Vol.8 大石(老ケ石)の話

8『大石(老ケ石)の話』

船坂川の上流に大石(別に老ケ石)と呼ばれている大きな石があります。
船坂橋から船坂谷道をおよそ二㎞程、渓流に沿って歩きますと、川上の滝手前にある堤防下の雑木の茂みの中にあります。御影石の一種で、亀裂も少なく横から見ると一軒の平屋のようで亀を伏せたようにも見えます。横が十五m、厚さ五m、高さ七mほどもある黒茶色で、黒錆をおびた大石です。しかし、その石の三分の二以上はまだ地下に隠れていると言われています。
この大石には神の崇りがあるといわれ、触れる者はありません。
昔、石を探し求めて歩く石材師がいました。この立派な石を見付けて喜んで切ろうとしました。村人は、「刃物をあててはいけません。先祖から伝わるおきてです。命が惜しかったらそっとしておくのが良い。」と固く止めましたが、石材師は忠告を無視して石にノミをあて金槌を振り下ろしました。すると、石の割れ目から真っ赤な血がどくどくと噴き出してきました。石切りは真っ青になって逃げ帰りました。その後気が狂って死んでしまいました。
又、ある人がこの石を割ろうとして、ノミを使いかけたところ急にふるいがきて悶死した。
又、ある石切りが大石にノミを当て金槌を振り下したら何の手ごたえもなくノミはスポットと石の中に入ってしまい、金槌を振り下したいきおいで石切りまで大石の中に飲み込まれてしまったなど色々と伝えられています。そして、石から流れ出る水は、石の涙であると伝えます。
別説に、この大岩に触れると早く老け込むともいわれています。
その他、石の上に大岩竜王大神と刻んだ石が祭られていたと言われています。水飢饉の際、村人はこの石の前で雨乞いをしたのかも知れません。
雨乞いの話しとしては、昔、村人は、“石の宝殿”へ雨乞いに行っていました。石の宝殿で祈祷し、火種を貰って村へ帰る。途中一言も発せず神社迄帰り、境内で火を燃やして盛大な水乞いのお祭りをしたといいます。
別に数年前迄、大岩信仰と称して信仰心の厚い外来者が注連縄をして、祭礼を行っていたと伝えられていますが、詳細はわかりません。
今は、大石の前に小さなほこらが残っているだけです。自然崇拝の所以でしょうか。
信仰説としては、この大石に大巳貴命・少名彦命・猿田彦命の三神が降臨され、この三神を招いて建立されたのが船坂山王神社であると伝えます。       (挿絵:平井ちゑ子)

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